Pages

押さえておきたい概念および記述

  • 第14期ひろしま労働学校第1回「マルクス『資本論』の映像を見て討論」資料③
2021年5月29日(土) コメンテーター  高橋専任講師

PDFのダウンロードはここから

マルクス・エンゲルス

目 次

  • (1) 唯物史観とは? …
  • (2) 価値法則とは? …
  • (3) 物象化と物神化 …
  • (4) 物質代謝 …
  • (5) 『資本論』での共産主義に関連する記述 …
〔以下、本資料でも『資本論』からの引用は国民文庫版(岡崎次郎訳)を利用し、分冊番 号(丸数字)とページ数のみを示します。なお、第1~3分冊が第1巻、第4~5分冊が 第2巻、第6~8分冊が第3巻です。〕

(1)唯物史観とは?

①唯物論的な歴史の見方=唯物論的歴史観}

唯物史観とはまずもって、歴史の唯物論的把握であり、唯物論的な歴史の見方=唯物論的 歴史観であり、マルクスの階級的立場を哲学的に歴史観として表現したもので す。それは『資本論』における経済学研究、すなわちブルジョア経済学(古典派経済学)を 批判し、科学的に整理していくときの「導きの糸」となりました(『資本論』の副題は 「経済学批判」です)。 しかしそれは、中身と切り離された単なる見方ではなく、史的唯物論(イメー ジとしては、どちらかというと歴史そのものに即したもの)としての一定の内容を伴って はじめて成立する。また、あらかじめ確立している唯物論を歴史の分野にも適用したとい うものでもない。むしろマルクスにおいては、唯物論(=弁証法的唯物論)が同時に唯物 史観として確立されるのです。
全文を読む

労働組合運動の前進のために −『資本論』を学ぼう

  • 第14期ひろしま労働学校第1回「マルクス『資本論』の映像を見て討論」資料②
2021年5月下旬 コメンテーター  高橋専任講師

PDFのダウンロードはここから

〔以下、本資料での『資本論』からに引用は国民文庫版(岡崎次郎訳)を利用し、分冊番号 とページ数のみを示します。なお、第1~3分冊が第1巻、第4~5分冊が第2巻、第6~8分冊 が第3巻です。また、映像からの引用は、コメンテーターが要約した部分もあります。〕

なぜ、今『資本論』なのか?

150年以上も前の本で、こんなに分厚い難しそうな本を改めて今、読む価値があるのかと 思われるかもしれない。でも、当時の社会も今の社会も資本主義社会で、同じ金儲(もう) けを一番優先するシステムです。そしてこの30年間のいわゆる「グローバル化」の下で、 資本主義が一番いいシステムだといろいろやってきた結果、格差が広がったり、過労死を するような働き方が広まったり、さらに言うと、環境問題がどんどん悪化したりしている。 その中で若者たちが今、資本主義じゃない別の世界をもっともっと作った方がいいんじゃ ないかというので、とくにアメリカなんかを中心に社会主義を支持するようになっている。 一部の資本家だけが儲ける今の社会ではなく、皆が自由で平等に生きることのできる社会 を作れるのではいかと感じているのです。(映像より)
こうした書籍がどんどん出版されている

全文を読む

コメンテーターによる『資本論』の紹介

  • 第14期ひろしま労働学校第1回「マルクス『資本論』の映像を見て討論」資料①
2021年5月上旬 コメンテーター  高橋専任講師

PDFのダウンロードはここから

(1)『資本論』全3巻の篇別構成第1巻 資本の生産過程
  第1篇 商品と貨幣
  第2篇 貨幣の資本への転化
  第3篇 絶対的剰余価値の生産
  第4篇 相対的剰余価値の生産
  第5篇 絶対的および相対的剰余価値の生産
  第6篇 労賃
  第7篇 資本の蓄積過程
第2巻 資本の流通過程
  第1篇 資本の諸変態とその循環
  第2篇 資本の回転
  第3篇 社会的総資本の再生産と流通
第3巻 資本主義的生産の総過程
  第1篇 剰余価値の利潤への転化と剰余価値率の利潤率への転化
  第2篇 利潤の平均利潤への転化
  第3篇 利潤率の傾向的低下の法則
  第4篇 商品資本および貨幣資本の商品取引資本および貨幣取引資本への転化(商人資本)
  第5篇 利子と企業者利得への利潤の分裂 利子生み資本
  第6篇 超過利潤の地代への転化
  第7篇 諸収入とそれらの源泉

〔上記のタイトル表記は国民文庫版(岡崎次郎訳)のもの。〕

(2)『資本論』全3巻の構造(ごく大まかに)

①第1巻「資本の生産過程」(1867年刊行)

25の章からなる7つの篇で構成され、剰余価値論を中心として一つのまとまりを持っている

『資本論』全体の土台とも言える第1~2篇では、「商品とは何か」ということから入り、価値論、商品流通と貨幣、貨幣の資本への転化を論じる。

そして第3~5篇では、労働力商品化すなわち〈資本家と労働者の搾取関係〉を基礎とした剰余価値の生産(絶対的剰余価値の生産と相対的剰余価値の生産)の解明を行う。

その上で第6篇では、労賃(賃金)という範疇(はんちゅう=カテゴリー)は、資本の生産過程の要(かなめ)をなす労働力の商品化、剰余価値の搾取を覆い隠す形態であるということを論じている。

この賃金論をつなぎ目として、第7篇では、生産された剰余価値の資本への転化である「資本の蓄積過程」(蓄積論)が論じられる。資本の蓄積運動の解明は、資本の再生産過程〔繰り返しの生産過程〕そのものの解明であるから、この第7篇から第2巻、第3巻の全体が資本の蓄積過程論をなしていると言える。

②第2巻「資本の流通過程」(1885年刊行、83年のマルクス死後、エンゲルスが編集)

21の章からなる3つの篇で構成され、資本の流通過程そのものが研究対象をなす。とはいえ、第2巻全体は、資本の蓄積過程=資本の再生産過程を、資本の生産過程と資本の流通過程の統一としてとらえようとするものである。

6つの章からなる第1篇第1~4章では、生産と流通の両過程を通して循環的に運動している資本の形態変化(=変態運動)そのものを研究する。この部分は、価値の自己運動体としてある資本の基本的性格をつかむ上で非常に重要である。

この4つの章を踏まえ、第5~6章では、資本の運動に不可欠な流通期間と流通費用について論じる。

第2篇では、資本の循環運動を周期的な過程として取り扱い、資本の回転期間と呼ばれる資本の循環周期を規定する要因、また資本の回転期間が、剰余価値の形成や投下資本の大きさに及ぼす影響を論じる。

そして第1~2篇を前提に、第3篇において、再生産表式に総括される社会的総資本の再生産過程論を通して、資本の蓄積過程=資本の再生産過程は、資本の生産過程(直接的生産過程)と流通過程の統一であるということを明らかにする。

なお再生産表式は、社会的総資本の流通の絡み合いの中で実現される資本主義社会の物質的再生産過程が、労働を実体とする客観的な価値関係により規制されていること、すなわち価値法則(資本主義の経済法則)を2階級(資本家階級と労働者階級)、2大部門(生産手段生産部門と消費手段生産部門)間の関係において、人間生活の物質的生産・再生産という根本の次元から論証している。

この価値法則そのものは、労働力の商品化を基軸とした資本主義社会における物的生産の均衡とそのための社会的総労働の配分を、商品価格の変動を通した生産過程への法則的規制の形で実現するものであり、資本主義が一社会として成立している絶対的根拠を明らかにしている。


全文を読む