- 第14期ひろしま労働学校第1回「マルクス『資本論』の映像を見て討論」資料①
(1)『資本論』全3巻の篇別構成第1巻 資本の生産過程
第1篇 商品と貨幣
第2篇 貨幣の資本への転化
第3篇 絶対的剰余価値の生産
第4篇 相対的剰余価値の生産
第5篇 絶対的および相対的剰余価値の生産
第6篇 労賃
第7篇 資本の蓄積過程
第2巻 資本の流通過程
第1篇 資本の諸変態とその循環
第2篇 資本の回転
第3篇 社会的総資本の再生産と流通
第3巻 資本主義的生産の総過程
第1篇 剰余価値の利潤への転化と剰余価値率の利潤率への転化
第2篇 利潤の平均利潤への転化
第3篇 利潤率の傾向的低下の法則
第4篇 商品資本および貨幣資本の商品取引資本および貨幣取引資本への転化(商人資本)
第5篇 利子と企業者利得への利潤の分裂 利子生み資本
第6篇 超過利潤の地代への転化
第7篇 諸収入とそれらの源泉
〔上記のタイトル表記は国民文庫版(岡崎次郎訳)のもの。〕
(2)『資本論』全3巻の構造(ごく大まかに)
①第1巻「資本の生産過程」(1867年刊行)
25の章からなる7つの篇で構成され、剰余価値論を中心として一つのまとまりを持っている。
『資本論』全体の土台とも言える第1~2篇では、「商品とは何か」ということから入り、価値論、商品流通と貨幣、貨幣の資本への転化を論じる。
そして第3~5篇では、労働力商品化すなわち〈資本家と労働者の搾取関係〉を基礎とした剰余価値の生産(絶対的剰余価値の生産と相対的剰余価値の生産)の解明を行う。
その上で第6篇では、労賃(賃金)という範疇(はんちゅう=カテゴリー)は、資本の生産過程の要(かなめ)をなす労働力の商品化、剰余価値の搾取を覆い隠す形態であるということを論じている。
この賃金論をつなぎ目として、第7篇では、生産された剰余価値の資本への転化である「資本の蓄積過程」(蓄積論)が論じられる。資本の蓄積運動の解明は、資本の再生産過程〔繰り返しの生産過程〕そのものの解明であるから、この第7篇から第2巻、第3巻の全体が資本の蓄積過程論をなしていると言える。
②第2巻「資本の流通過程」(1885年刊行、83年のマルクス死後、エンゲルスが編集)
21の章からなる3つの篇で構成され、資本の流通過程そのものが研究対象をなす。とはいえ、第2巻全体は、資本の蓄積過程=資本の再生産過程を、資本の生産過程と資本の流通過程の統一としてとらえようとするものである。
6つの章からなる第1篇の第1~4章では、生産と流通の両過程を通して循環的に運動している資本の形態変化(=変態運動)そのものを研究する。この部分は、価値の自己運動体としてある資本の基本的性格をつかむ上で非常に重要である。
この4つの章を踏まえ、第5~6章では、資本の運動に不可欠な流通期間と流通費用について論じる。
第2篇では、資本の循環運動を周期的な過程として取り扱い、資本の回転期間と呼ばれる資本の循環周期を規定する要因、また資本の回転期間が、剰余価値の形成や投下資本の大きさに及ぼす影響を論じる。
そして第1~2篇を前提に、第3篇において、再生産表式に総括される社会的総資本の再生産過程論を通して、資本の蓄積過程=資本の再生産過程は、資本の生産過程(直接的生産過程)と流通過程の統一であるということを明らかにする。
なお再生産表式は、社会的総資本の流通の絡み合いの中で実現される資本主義社会の物質的再生産過程が、労働を実体とする客観的な価値関係により規制されていること、すなわち価値法則(資本主義の経済法則)を2階級(資本家階級と労働者階級)、2大部門(生産手段生産部門と消費手段生産部門)間の関係において、人間生活の物質的生産・再生産という根本の次元から論証している。
この価値法則そのものは、労働力の商品化を基軸とした資本主義社会における物的生産の均衡とそのための社会的総労働の配分を、商品価格の変動を通した生産過程への法則的規制の形で実現するものであり、資本主義が一社会として成立している絶対的根拠を明らかにしている。